HETIについて

P1:この規約は2018年にアイルランド・ダブリンで開催されたHETI国際会議におけるオープンフォーラムに出席したHETI会員からのフィードバックをもとに作成されました。
倫理という課題にどのように取り組むか会員同士で議論する場を望む会員の要望にしたがって、ダブリン会議中に議論の場を設けることにしました。
この初会議の結果、献身的で、経験や知識が豊富な以下の会員で構成されるHETI倫理タスクフォースが結成されました。
P2:この初回の会合以来、このタスクフォースは人と馬の相互作用の分野でサービスを提供する人々に倫理、福祉の基準を提供する目的で精力的に活動をしてきました。
P3 馬の福祉（Welfare）に関するガイドラインとともに、HETIは馬の福祉諮問委員会を、私達とともに働く馬の斬新で最善のケアに関するリサーチ、研究を会員に提供する目的で結成しました。
これにより、私たちが会員に提供する情報は、科学に基づいた馬の扱い方やトレーニングであることを保証できることになります。
P4 本書は、各国で既存する基準やベストプラクティスを取り替える意図ではなく、そのような規約を補完し包括的な倫理ガイドラインの提供を目的に作成されたものであると留意することが重要です。
また、本書は会員のフィードバック、定期的な評価に基づいて秩序改訂、進化するものです。

HETI 理事執行委員会を代表して、献身、忍耐力とチーム精神によって本書を作成したHETI倫理タスクフォースに心から感謝を申し上げます。
1. Overview: 概要
HETI (The Federation of Horses in Education and Therapy International AISBL)は、1974年に設立された非営利団体であり、45ケ国以上にまたがる会員により構成されています。

1.1 Purpose of this document: 本書の目的
この国際倫理ガイドライン宣言はHETIのミッションステートメント（理念）、コアバリュー（基本的価値観）が業界で確実に満たされるため、専門家の実践と馬の福祉のために道徳的指針と何が正しく何が間違っているかを提示します。
本書は以下の分野における馬と活動をするサービス提供者の責任を規定しています。
 精神的健康 肉体的健康
 社会的介護、ケア
 教育
 自己啓発
 福祉
 社会的包摂（ソーシャルインクルージョン）

このリストは網羅的なものではなくレクリエーション、スポーツに焦点を当てた馬の活動とHETIのサービスを明らかに区別することを目的としています。
本書で使う”サービス提供者“には馬介在活動の実践者、ファシリテーター、インストラクター、教育や、セラピストが含まれています。

1.1.1. HETI Mission statement
HETI のミッション（mission）は、以下に挙げることを通して、馬の介在活動(Equine Assisted Activities: EAA)と馬の介在療法（Equine Assisted Therapies: EAT）の分野において慈善的、科学的、治療的 そして教育的な目的で活動をする世界中の団体や個人の協力関係を促進することです。
A:治療的、スポーツ、レジャーににかかわらず、リハビリテーション、教育方法に関するリサーチ。
以下（B以下）の目的、またはそれらに関する、または類似する目的にに直接、または間接的に関わる課題についてのリサーチ。
B: これらの活動に関連する技術に関する結果の研究と普及
C: 組織や連盟が馬介在活動と療法を実践すること、推奨される実施基準を採用することを促進、奨励
D: 団体役員、スポーツ専門家、医療、医療補助（パラメディカル）セラピストや教育関係者がそれぞれの専門領域を踏まえながら馬介在活動の技術を取得することを推奨
E: 治療的馬術活動を提供するための実践基準の作成。
F: 業界で共通の言語を使いコアバリューを明確にするための、倫理基準と手順の文書化

1.1.2:HETI のビジョン
HETI は馬介在活動と馬介在療法に関わるすべての人のための国際的な業界権威的なリソースになることを目指します。

1.1.3:HETI コアバリュー
HETI はこの業界で働く個人会員と所属団体間での友好、協力関係を保つ文化の促進に尽力します。
これによって、卓越性、、倫理、尊厳、多様性と、有意義なリサーチの機会に焦点を置く事ができます。

1.2. HETIメンバーシップコンプライアンス
HETI の会員は前述の包括的な諸原則を遵守し、各自の役割に応じて以下にも従うことが要求されます。
• HETIサービス提供者倫理ガイドライン
• EHTI馬の福祉に関する倫理ガイドライン
• 各国、現地の法律、規制
1.3 HETI サービス提供者倫理ガイドラインの概要
サービス提供者は、個人的な倫理、道徳的背景に関わらず、プロフェッショナルとして一貫した方向性を持つことが必要です。報酬の有無に関わらず、サービス受益者、家族、馬、及び同僚を優先することが要求されます。
HETI はサービス提供者が遵守するべき以下5つの基本原則を採用しています。それぞれの原則にいくつかの特定の倫理基準が下記の通り定められています。

1:危害を与えない。
2:尊敬・敬意
3:誠実性
4: 能力
5: 説明義務

1.3.1.危害を与えない
危害を与えることを避け、他人から危害を受けないようにかつどうする。
サービス提供者は以下の義務を負います。
1;サービス、スタッフ、ボランティア、他のサービス利用者、訪問者、研究者、動物などによって引き起こされる可能性のある危害をふせぐための適切な監視と防止を提供する。
2.危害を防ぎ、問題を解決し、不正行為を関係当局に報告するために直ちに行動すること。危害には身体的、性的、感情的、精神的、そして評判、または先っ等やザギなどのフッ質的な損害も含まれる。
3.サービス受益者が適切な健康状態と個人的成長を達成できるようなサービスを提供する
1.3.2. 原則2:敬意・尊重
敬意、尊重の定義は人も動物も本能的で無条件な道徳的価値観を持ち、その環状、願望、権利や慣習を常に尊重すべきだという価値観である。
サービス提供者は以下の義務を負う。
1: サービス受益者、スタッフ、同僚、ボランティア、ビジター、と提供者が管理する馬の権利、尊厳、価値感を尊重する。
2: 偏見のない態度で活動する。たとえば、宗教、民族性、性別、年齢、人種、障害、または性的指向など
3: サービス受益者の自己決定権や選択権を尊重する。
4: サービス受益者、保護者、または介護者が提案された活動を理解し、同意していることを確認するためインフォームドコンセント（同意書）を取得する。同意を要請書に含まれる事項は以下のものが含まれる。
 A: リスク
 B: プライバシーと個人情報の保護の限度
 C: いつでもサービスを終了できる権利
 D: 写真、録音、ビデオ撮影
 E: 第三者の見学
 F: サービス受益者、保護者と介護者への活動の木フョう、期間、及び費用
G: 身体的接触（サービス受益者の体に触れること）
5: 個人情報やプライバシーに関する権利を尊重し、活動する。
 A: サービス、活動の内容におおじた適切なレベルのプライバシーを提供する。
 B: 個人情報とプライバシー保護に関する方針を文書化し、閲覧可能にする。
 C: サービス受益者に個人情報やプライバシー保護の限界、限度について通知する。
6:思いやりと気配りのある職場文化を維持する。
1.3.3. 原則３： 誠実性
誠実性の定義は正直で信頼でき、倫理原則や価値感を妥協することなく一貫して遵守する慣習である。
サービス提供者は以下の義務を負う
1.自らの職業、業界全体の信用を失わないように行動すること。
2. 提供するサービスの有効性、そして関連するリサーチの結果について誠実かつ正確であること
 A: サービス受益者に誤解を与えたり、サービスの有効性を誇張しない。
3. プロとしての義務を尊重し、人に対して公平で透明に接すること。
4. プロとしての公正な判断の行使を妨げる利益相反を避けること。
5. プロとしての立場を使ってサービス受益者を利用する、あるいは二重関係を避けること
a. たとえば、二重関係が避けられない場合は、サービス提供者はサービス受益者を守るため必要な措置を講じ、明確かつ適切で文化的に繊細な境界線（超えてはいけない線）を設定すること。
1.3.4.
原則４：能力・適格性
能力。適応性の定義は個人（または組織、団体）がある仕事や状況の中で効果的に行動できるために関連した能力、献身、知識と技術を持っていることである。
サービス提供者は以下の義務を負う
1：自分の資格、活動の範囲について誠実で正確であること。
2:自分の知識や専門領域、今日欲の限界を認識し、その限界を超えないように注意すること。自分の役割や責任について誤解を与えないように行動すること。
3:提供しているサービスを実施するために的確な資格、トレーニングを持っている、あるいはサービスを提供するための経験
が適切であることを実証できること。
4:どのような手順、行動、プロセスを実行する能力があるかを認識し、サービス使用者に対して明示すること。
5: サービス利用者、同量、馬と関わる際に必要な能力を維持するため、専門的な技術や倫理観を維持し、向上させること。
6: 従業員やボランティアからなるチームを運営するために手順やポリシーなど、十分な指導とトレーニングやミーティングを行い、専門能力向上の機会をを提供すること。
1.3.5 説明責任
説明責任とは自らの行動、決定とその結果に責任を追うことと定義される。法律を守るだけでなく、それ以上の意味を持つ。
1: サービス提供者が地域、国、そして国際的な法律や規約に従い、サービス利用者、一緒に働く人谷、所属する専門家団体に対してサービス提供者が責任を負う方法を説明したポリシーを作成し、検閲できるようにすること。記載されるべき事項は下記の通りである。
 a:健康と安全―リスク評価方法や緊急時の手順を含む。
 b:児童や弱者の保護
 c:平等と多様性
 d:データ保護を含む個人情報守秘義務
 e:動物福祉
 f:環境への影響
 g:苦情
 h:孤立労働
2:すべてのサービス利用、ボランティア、従業員、、ビジターがこれらのポリシーを、そしてポリシーに更新や変更がある場合にもそれを認識していることを保証する。
3:すべての活動と、職場に対する保険付保を維持する。
4:参加者の出席記録、活動報告書、評価報告書、自己報告書、安全保護対策書、そしてサービスの終了の詳細等を書面にて管理する。
5:倫理原告が議論され、支持される職場環境を作ること。定期的に全ての方針や慣行が見直され、討論され、倫理的なフィードバックループが存在することを含む。
2. HETI馬の福祉と倫理ガイドライン
2.1
サービス提供者向けの倫理ガイドライン
すべての馬の福祉を管理することはすべてのサービス提供者の倫理的責任であり、以下のことを配慮する必要がある。
2.1.1. 馬が肉体的、精神的、または感情的な虐待、ネグレクト、苦痛を受けることは許されない。虐待が実際に起こる、または起こりかねることはあってはならないし、馬の福祉はサービス提供者によって常に守られなければならない。
2.1.2. 馬と顧客との間の交流は馬と顧客双方にメリットが有るように適切に監修、管理されなければならない。
2.1.3. サービス提供者は馬と人との全ての交流がの福祉を維持することができるための知識と能力を持った適切な人の監修下で行われることに倫理的な責任を追う。
2.2
5つの規定、福祉目的パラダイム
HETI の馬の福祉倫理ガイドラインは、格好、地域の法律、監修、文化、規制条件の影響を受ている。さらに、HETIは5つの規定、福祉目的パラダイムを支持する。これらの規定は動物、ここでは馬に対する肯定的、そして否定的な経験と状況を含んでいる。

規定	動物の福祉の目的
１:良好な栄養: 健康と活力を保つために必要な新鮮な水と飼料、餌に常にアクセスできる。	飢えやのどの渇きを最小限に抑え、食べることが快適な経験となる。
２:良好な環境 日陰 / シェルターまたは適切なハウジング、換気のよい、快適な休憩エリアを確保する。	不快感や露出を最小限に抑え、適切な温度、、身体的、その他の快適性を促進する。
３:健康 病気や怪我の予防、迅速な診断と治療を行い、筋緊張、姿勢、心肺機能を維持する。	息切れ、吐き気、痛み、その他の不快な体験を最小限に抑え、頑強で、活気があり強く、バランスのとれた肉体活動、を楽しめる。
４:適切な行動 十分なスペース、適切な設備、相性の良い仲間など環境を様々な意味で適切な状態を提供する。	脅威や行動の不快な制限を最小限に抑え、有意義な行動への参加を促進する。
５:精神的にポジティブな経験 安全で相性の合う、または種に適した快適な生活・体験を提供する。	快適さ、喜び、興味、自信、主導権を様々な形で促進する。馬の行動や認知のプロセスに基づいた効果的でヒューメイン（人道的）な馬のトレーニングを促進する。

2.3 倫理声明
HETI のすべての会員はこの業界におけるすべての人間と馬の福祉を守るためにここに記されたガイドラインを遵守する倫理的義務を負う。

This is a translated document of HETI Ethical Guidelines. This document has been translated by
Japan Therapeutic Riding Association (“JTRA”), Golva CO., LTD and Miyako Kinoshita. To view
the original full document in English, go to https://hetifederation.org/resources/ethicalguidelines/ or contact office@hetifederation.org. No liability or responsibility is assumed by The Federation of Horses in Education and Therapy International AISBL for the accuracy of this translation.


Appendices and Endnotes
Appendix 1: Five Freedoms for Animals[14]
The Five Freedoms are internationally accepted standards of care that affirm every living being's right to humane treatment. These standards were developed by Britain's Farm Animal Welfare Council in 1965 and adapted by the Association of Shelter Veterinarians for companion animals in shelters. The Five Freedoms ensure that we meet the mental and physical needs of animals in our care:
1. Freedom from hunger and thirst by ready access to fresh water and diet to maintain health and vigour. This must be specific to the animal. For example, puppies, adult dogs, pregnant cats, and senior cats all need different types of food provided on different schedules.
2. Freedom from discomfort by providing an appropriate environment including shelter and a comfortable resting area. This means you should provide soft bedding and an area with appropriate temperature, noise levels, and access to natural light. If an animal is outside, it must have shelter from the elements as well as appropriate food and water bowls that will not freeze or tip over.
3. Freedom from pain, injury, or disease by prevention or rapid diagnosis and treatment. This includes vaccinating animals, monitoring animals, physical health, treating any injuries and providing appropriate medications.
4. Freedom to express normal behaviour by providing sufficient space, proper facilities, and company of the animal's own kind. Animals need to be able to interact with — or avoid — others of their own kind as desired. They must be able to stretch every part of their body (from nose to tail), and run, jump, and play. This can be particularly challenging when animals are housed in individual kennels.
1. Freedom from fear and distress by ensuring conditions and treatment which avoid mental suffering. The mental health of an animal is just as important as its physical health — as psychological stress can quickly transition into physical illness. These conditions can be achieved by preventing overcrowding and providing sufficient enrichment and safe hiding spaces. Embracing the Five Freedoms supports the health and welfare of the animals in our care and provides adopters with the best possible insight into their personalities.

Endnotes and References
[1] HETI (2014) Articles of Association of The Federation of Horses in Education and Therapy International AISBL, September 2014.
[2] CBEIP https://www.cbeip.org/code-of-ethics( accessed 10th August 2019).
[3] Informed Consent is defined as an agreement or permission to do something from someone who has been given full information about the possible effects or results. https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/informed-consent accessed 19th August 2019
[4] Dual relationships are defined as those in which “[a] professional . . . assumes a second role with a client, becoming . . . friend, employer, teacher, business associate, family member, or sexual partner.” Professional Boundaries Guided by Respect Amy Haddad PhD, RN, ... Ruth Purtilo PhD, FAPTA, in Health Professional and Patient Interaction (Ninth Edition), 2019
[5] https://www.ifsw.org/global-social-work-statement-of-ethical-principles/
[6] http://www.businessdictionary.com/definition/competence.html
[7] https://www.who.int/about/ethics/ethical-principles
[8] According to Mellor (2016) Provisions, as opposed to the five Freedoms, have probably been more influential in improving animal welfare by providing practical advice on the minimisation of negative experiences and states ; second, most of the negative experiences referred to in the Five Freedoms paradigm can only be minimised, not eliminated, because when the internal or external conditions that give rise to them could eventually become life threatening they are essential for motivating animals to engage in very specific behaviours that are critical for securing their survival ; and third, the earlier primary aim of animal welfare management, i.e., to minimise negative experiences and states, must now be broadened to also include the recognition and promotion of positive experience or states Mellor DJ. (2016). 2020 Horses in Education and Therapy International A.I.S.B.L.
[9] Moving beyond the “Five Freedoms” by Updating the “Five Provisions” and Introducing Aligned “Animal Welfare Aims”, David J Mellor, Animals, 2016 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5082305/
[10] The names of the Five Provisions(1) parallel those of the Five Domains Model(2) for animal welfare assessment, and the names of numbers 1–4 are the same as the five European Welfare Quality (WQ®) principles; Five freedoms for animals (1965 Report of the Technical Committee to Enquire into the Welfare of Animals kept under Intensive Livestock Husbandry Systems, the Brambell Report,) (Annex 1p.) Discussion paper Guide to good animal welfare practice for the keeping, care, training and use of horses (2016) Discussion paper - European Commission
[11] Note that the first four Animal Welfare Aims refer both to minimising negative experiences or situations and to promoting positive ones, and the fifth one is entirely directed at promoting positive experiences. This is in keeping with the now accepted objective of giving greater attention to the promotion of positive welfare states. Guide to good animal welfare practices for the keeping, care, training (2016, p.9) WSAVA Animal Welfare Guideline (2018)
[12] HETI Ethics Task force addition to Mellor's (2016) aims
[13] Task force addition
[14] https://www.animalhumanesociety.org/health/five freedoms-animals